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弘前の春、名物の桜を見守りつづける弘前公園の「桜守」たち

日本有数の桜の名所「弘前公園」

東北で生まれ育った者にとって、長く、厳しい冬が終わった後に、訪れる春は格別です。そして、明るい陽ざしとともに春の訪れを告げる花として、「桜」ほどその存在が華やかなものはないだろうと思います。

今回のインタビュアーの私・岩井も、仙台の青葉城跡や榴岡(つつじがおか)公園の桜、山形・霞城(かじょう)公園などの桜を見てきましたが、『弘前公園』の桜がとても有名なことはもちろん知っていました。ライトアップされた城壁と、お濠に浮かぶ「花筏(はないかだ)」…。そして、その桜を守ることに情熱を注ぐ「桜守」と呼ばれる人たちについても、数年前TV番組で観た時にとても感銘を受けたことを覚えています。

青森転勤2年目の今年、ようやく見ることができる弘前の桜、そして偶然にも、今年が弘前公園の「観桜会」の100周年という奇跡的な巡り合わせに、今からワクワクしています。

雪が残る3月半ばの弘前公園での、「桜守」への胸が熱くなったインタビューをご紹介する前に、まずは「弘前公園」について皆さんにご紹介しておきましょう。

「弘前公園」は、慶長16年(1611年)、弘前藩二代藩主・津軽信枚によって築かれた「弘前城」の跡地全域を公園とし、明治28年(1895年)に開園しました。ちなみに、現在、本丸の石垣修理事業を行っています。お濠を埋め立てて石垣を解体するだけでなく、何と天守自体を動かす(曳屋)という大がかりな工事ですが、約5年後の2023年に完了予定です。

弘前公園で行われるイベントとしては、何と言っても、春の「弘前さくらまつり」ですが、秋の「菊と紅葉まつり」、冬の「雪灯籠まつり」(※写真)も人気が高く、県内外、そして外国からもたくさんの人が訪れます。

「弘前さくらまつり」にどのくらいの人が集まるかというと、この3年間でも、平成27年226万人、平成28年236万人、平成29年251万人。毎年200万人以上の観光客が、弘前の桜を観にきてくださっているのですね。

「桜守(さくらもり)」たちのヒストリー

今回、快くインタビューに応じてくださった「桜守」の海老名さんは、弘前市都市環境部・公園緑地課の総括主査を務める旧浪岡町出身の37歳。

平成21年から弘前市役所で働き始めた海老名さんが桜守になられたのは、平成26年に「公園緑地課」への異動がきっかけだったと言います。翌27年12月には樹木医資格を取得。今年で桜守歴2年目となる海老名さんに、桜守について色々と伺いました。

――そもそも弘前公園の「桜守」とはどのような人たちなのでしょう?

海老名さん:
「1年を通じて、サクラの保護育成に従事する弘前市の職員のことですね」。

――なるほど、皆さん市役所の方だったのですね。いつ頃から市での取り組みが始まったのですか?

海老名さん:
「昭和27年に公園管理事務所が設置されました。桜の管理を本格的に始めたのは、昭和30年代の半ばだと聞いています。『桜守』の歴史ということで言えば、初代・公園管理事務所長(昭和29~45年)であった工藤長政さんが、最初の『桜守』ではないかと言われているようです」。

――昭和29年と言えば、今から63年も前のことなのですね。

海老名さん:
「その後、昭和46~55年に2代目の公園管理事務所長を務められた石戸谷恵二郎さん、そして昭和48年から平成12年までの長きに亘って桜守として活躍されたのが、公園緑地課主幹をされた小林範士さんです」。

――歴史を振り返る言葉には、先人に対する尊敬の念が自然に表れているよう。そんな桜守の歴史には、平成12年~16年の4年間「空白の」期間があったそう。

海老名さん:
「小林範士さんが身体を悪くしてしまい、その間活動を停止していたという形になります。樹木医不在の期間は、桜の咲き方が違かったと聞きました」。

――それは大変ですね。これだけの広さですし、一人でできる仕事ではないですよね。

海老名さん:
「樹木医が一人だと、やはり何かがあった際のリスクがあります。作業の負担を軽減するためにも、平成26年からは”チーム”として活動しています。現在は、平成16年以降公園緑地課参事を務めていらっしゃる小林勝さん、女性桜守・橋場真紀子さん、そして私・海老名雄次の3名が樹木医として勤務しています」。

桜からのメッセージに耳を傾ける日々

――では、弘前市の職員でもあり、樹木医でもあり、「桜守」と呼ばれる人たちの日々のお仕事はどのようなものなのでしょう。

海老名さん:
「桜が中心にはなりますが、それだけではなくて、公園内の樹木すべての管理が主な仕事です。毎日、木の様子を確認し、枝剪定などいつやるのかのタイミングを図ったうえで、実際の作業スタッフへの指示・指導、現場の管理を行っています。さらに、1年を通して樹木に肥料や薬をあげたり、土を掘って根を確認し、その根の状態に合わせて土壌改良をするのも私たちの作業です」。

また、桜の開花予想を報告するのも海老名さんたちの仕事だそう。
よく聞く、「何分咲き」の状態であるかを、開花後は毎日発表しているとのことですから、この桜守たちの報告が、ニュースや天気予報の「ようやく開花しました」とか、「まもなく満開です!」といった桜前線情報として発信されているのですね。

――きれいな花に関わる仕事とは言え、もちろん楽しいことばかりではないですよね。時には厳しさを感じることもあるのではないでしょうか。

海老名さん:
「何よりも自然を相手にしているというところが、この仕事の大変なところです。桜の葉っぱは、大きさや色などで私たちにメッセージを送ってくれています。『元気だよ』とか、『大丈夫だよ』って。反対に『元気ないよ』とか、ハッキリ『SOS』を送ってくることだってあります。
それにいち早く気づいてあげて、ケアをすることが重要です。もちろん、虫やキノコの発見・除去なんかも…」。

写真は、弘前公園にある日本一太いソメイヨシノですが、このような名木だけでなく、1本1本、人の手で作業を行うことの大変さ。私たちが春にきれいな桜花を楽しめる裏側には、こんな努力が隠されていたことに気づかされて、頭が下がる思いです。

弘前の桜の花は”ボリュームがある”と評判です。一芽から出る蕾の数は、通常で3~4個と言われていますが、弘前の場合は、平均で4~5個、時には7個もあるそう。蕾が多ければ多いほど、花開いた時のボリュームは増え、見ごたえのある桜の木となるそうです。

海老名さんは、「蕾は元気のバロメーターですね。木が『頑張ってる』と言ってくれてるんです」と仰られましたが、それはやはり、桜守や公園スタッフの管理が行き届いている証拠なのではないでしょうか。

やっぱり、「春」はテンションがあがりますね(笑)

海老名さん:
「もちろん、厳しいことばかりじゃありません。楽しいこと嬉しいこともたくさんあるんですよ」

――という海老名さんに、今度はこの仕事のやりがいを聞いてみました。

海老名さん:
「お花見のシーズンに毎日公園を回っていると、『きれいだね~』とか『わー!』とか来園者の感嘆の声が聞こえてくるのは本当に嬉しい!」と笑顔がほころぶ海老名さん。

海老名さん:
「また、今の時期(インタビューは3月半ば)のように、桜の問い合わせや取材が増えてくると、やっぱりテンションが上がってきます。実は、花が咲いてしまうと作業は落ち着くんです。樹木医としての作業としては、2月、3月が最も忙しい時期で、4月に入ると今度は『さくらまつり』の準備で、電話がパンク状態になることもあるんです」。

――なるほど、どうやらちょうど忙しい頃にお伺いしてしまったようですね…。

海老名さん:
「忙しいけど、それでも毎年春を迎える気持ちはワクワクしますし、楽しさでいっぱい! 桜が大好きなんです」。

――よかった。ところでお話を伺っていて、俄然「桜守」という仕事に興味が沸いてきました。

海老名さん:
「桜守になるには、ですか? う~ん、そうですねえ。弘前公園に限定すると、樹木医資格を取得して、弘前市の職員に採用されることでしょうか。でも、一般的には桜を愛する気持ちがあって、一生懸命桜を管理している人たちのことを『桜守』と呼んでいますので、私自身は、弘前公園の現場職員全員が『桜守』だと思っています」。

弘前の桜、今年で100年! 是非皆さんに来ていただきたいです

――さて、いよいよ今年の春が楽しみになってきました。桜はいつぐらいに咲くのでしょうか?

海老名さん:
「弘前公園では概ね4/28が満開の時期ですが、気温や天候によって変わるものです。弘前公園では園内のマルバマンサクが開花してから開花予想を計算しています。もちろんぴったり当てるのは難しいんですけど、とっても楽しい仕事なんです」。

――最後に、弘前公園の桜の見所を教えてもらえますか。

海老名さん:
「一番のオススメは、やはり『夜桜』ですね。そして外濠に落ちた花びらが、ピンクの絨毯を思わせる『花筏(はないかだ)』。朝・昼・晩、本当に一日中見てても飽きないのが弘前公園の桜です。何日でも見て欲しい。見所、スポットなんてない! 全ての場所がオススメです!!!」

桜は、大概、香りが少ないものが多いのですが、満開の公園には何とも言えない「桜」の香りを感じられるそう。

「今年は弘前公園の観桜会100周年。是非、お越し下さい」とのことでした。

取材後記

インタビューから1ヶ月ちょっと、眠っていた桜が満開を迎えた4/25に、弘前公園を再訪してきました。

アポイントは取らずに訪問したので、「桜守」の海老名さんにはお会いできませんでしたが、きっと公園内のどこかで観光客をみて、「今年も無事に咲いてくれた」という喜びに浸りながら、桜の枝、幹、根など1本・1本、木の体調を診て回っているんだろうな。。。

今年のお花見はこれまでとはまったく違いました。感激、感動の初弘前公園でした!
海老名さん、改めてありがとうございました。


ご協力、ありがとうございました!
桜守(from 青森県弘前市) 弘前市都市環境部・公園緑地課 総括主査 海老名さん http://www.hirosakipark.jp/